■世界中のテレビ局にメールを13000通送った

素顔は爽やか!

――1度辞めた変面を、また再開したのはなぜでしょう。

Enishi 奥さんと出会ったことがきっかけです。そこで変面から“フェイスチェンジ”に進化させたのが始まりですね。

 奥さんと出会う前は、1年くらいずっと僕なりの変面を模索し続けていました。当時は、お面も全部手描きだったんです。

――手描き!

Enishi 秋葉原で発光機材を買って、そこに描きたい元ネタを貼って、その上から真っ白なお面を被せて描いていました。絵の具にしたりポスカにしてみたり……とやっていましたね。

――じゃあ、手描きの面でライブに出たり?

Enishi いや、もう何もしていないです。ただただ、描き上げたら公園に行って動画を撮って、世界のテレビ局を調べて、「あ行」から順番にすべての各国テレビ局に動画を送っていました。

――世界中の、あらゆる国にですか!?

Enishi はい。ちなみにアイスランドのテレビ局が一通目です。

――どのくらい送っていたんですか?

Enishi 1日にメール40通くらいを365日やっていたので、13000通くらいですかね。それをルーティンにして、どんなことがあっても送っていました。

――すごい数! 返信はありましたか?

Enishi 先日あらためて数えてみましたが、3500通分の1くらいの割合でありましたね。返信をいただいて出演が決まった局もありましたが、ちょうどコロナ禍でロックダウンが始まった時期と重なってしまい、結局行けなかったんですよね。

 ちなみに、今回AGTに出たら、そのときの一通だったルーマニアのテレビ局から連絡があり、オファーをくれました。「本当ハ昔からあなたのことを期待していたよ」という内容で。

――ちゃっかりしていますね(笑)。

Enishi (笑)。でもただただ、「呼んでくれてありがとう」という気持ちです。

――種を蒔いておくことの大切さがすごくよくわかるお話ですね。

Enishi そんなふうにメールを送るだけの日々で奥さんに出会ったんです。彼女が、僕が手描きで面を作る姿を見て「それ、グラフィックでできるよ」と言ったとき、「ああ、この人は僕にとって一生必要な人だ」と確信した瞬間でした。

――目の前が開けた感覚があったんですね!

Enishi 本当に37年待ちましたよ。僕はそれまで別の芸名でしたが、奥さんに出会ってご縁の大切さが身に染みて、「縁(えにし)」に変えたんです。

 彼女は才能があるのに、出会った頃はすごく自信なさげでした。それで、「その才能、俺が世に出す!」と思ったことが始まりで。僕は当時会社もやっていたので、ポップを作ってもらったりデザイン関連をやってもらいました。それで従業員たちが「すごくいいね!」と言うのを目の当たりにして、自信になっていったようです。

――変面作りでは、奥さまはどんな作業をされているんですか?

Enishi もう全部です。僕の変面の芸において、割合は彼女が9、僕が1くらいです。奥さんがパソコン2台を駆使して、一つ作るのに早くても4日はかかります。

――そんなにかかるんですね! あのAGTで披露した審査員の方々の面も。

Enishi 平面の写真からお面にするわけで、立体にしたときの顔の部位の位置調整や皮膚などの色の調整が、もう大変な作業なんですよ。何度も布にプリントして色や位置を調節したり。

――そこは奥さまの腕の振るいどころなんですね。その間、Enishiさんは何をやっているんですか?

Enishi その間、僕はプレステで『ウイニングイレブン』をやっていますね(笑)。衣装もすべて奥さんが作ってくれています。だから「Enishi」は2人組のようなものなんです。今回、アメリカで受けたインタビューではすべて「僕たちは」という一人称複数で答えましたね。

――まさにベストパートナー!

Enishi ATGにも「奥さんを舞台袖まで連れていきたい」とお願いしました。それが向こうに出した条件でしたね。彼女は本当に心強い存在です。僕の力だけでは一生届かなかった場所に、連れてきてくれたんですから。

――今後、ますます絆が深まりそうですね。

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 奥さまとの“最強タッグ”ぶりを語ってくれたEnishiさん。#2では変面パフォーマンスに至るまでを語ってくれた!

えにし 1986年7月24日生まれ、大阪府堺市出身。100companyとエージェント契約中。中国の伝統芸「変面」を独自進化させたフェイスチェンジで、アメリカのオーディション番組『アメリカズ・ゴッド・タレント』シーズン18に出演。変面技術と顔ハメを駆使して審査員のモノマネフェイスチェンジを行い、審査員4人中3人が「◯」を投じた。8月20日には大人気トークバラエティ番組『まつもtoなかい』(フジテレビ系)にも出演するなど、国内での注目度も増している。

奥さまが作った見事な衣装