■ロスに悲しむ視聴者を凍り付かせた仲間由紀恵の極悪演技

「近年では見直されつつもありますが、田沼意次は行なってきた政策の内容から“賄賂の帝王”の異名を筆頭に悪人のイメージがあります。

 しかし、本作では、民を思って、本気で世の中を良くしたいと思っているのに悲劇に見舞われ、最終的には報われないまま終わる姿を、松下さんの繊細な演技で描いていました。“終わった”の一言だけで、あそこまで視聴者を虚しい気分にさせられる女優は、そういないでしょうね。

 ちなみに、2025年放送予定のNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)~』では渡辺謙さん(63)が田沼を演じますが、やはり“教科書でそういうふう(悪徳政治家)に習った”“イメージを払拭して、全く違う人物像をお届けしたい”という話を出演者発表会見で話していましたね」

 青沼役の村雨も、「いつか必ず再び世が人痘を求める時が来ます! その時は皆さん、お願いします!」と、理不尽な死罪に憤る蘭学者たちに未来を託すシーンや、斬首される直前にこれまでの人生を振り返り穏やかな笑みを浮かべるシーンなどは、強く引き込まれるもの。

※画像は村雨辰剛の公式X(ツイッター)『@MurasameTatsu』より

《昨夜のドラマ「大奥」が辛すぎて、夢にまで出てきた今朝は青沼様ロスでございます》
《よしなが大奥の田沼意次の(終わった…)があまりにも……そのお姿……》
《源内、梅毒だとわかった時(中略)「(病で錯乱して)私が私じゃなくなるのは嫌だ」と言ったけど、最期の最期まで源内は源内で貫いた…というか、源内は源内という天真爛漫な女の子を最後までいることを頑張ってたのか…そっか…もう最高……》

 と、三者三様の最後の演技と、救いのないシナリオに、多くの視聴者が見入り、ショックを受けることになった。

「そして、ロスに打ちひしがれる視聴者を恐怖のどん底に叩き込んだのが、仲間さん演じる治済です。治済は人痘接種が認められ始めていた時期に息子に接種させていて、それが後の11代将軍・徳川家斉(中村蒼/32)だった。

 懐柔した定信(安達)を老中に、息子の家斉を将軍に据えて、実権は治済が握る――悪女・治済の一人勝ちの展開になってしまったんです」

 前回の第12話で治済は表向きは穏やかな笑みを浮かべながら、裏では田沼と定信が互いに潰し合うように仕向ける悪女として描かれていた。