■記憶がないのに行動できている――「ブラックアウト」の恐怖
「この時期に山口さんは、ハードワークで睡眠障害も患っていて、処方薬を飲むことが“飲んだら寝ないと!”というプレッシャーになってしまい、症状が悪化。薬を酒で流し込むような状況になった結果、毎日のように“ブラックアウト”するようになったことを話していました。今回の講演で、特にお酒の怖さをひしひしと感じたのは、このブラックアウトに関する説明でしたね」
一般的に酔っ払いといえば泥酔。ベロンベロンで、まともに動けない――そんな様子をイメージするだろう。
ところが、「ブラックアウト」は違う。表向きは普通に人と話したり、タクシーを呼んで家に帰ったりできているが、その間の記憶はすっぽり抜け落ちているというのだ。どう考えても異常状態だが、仕事はこなせていたため、山口氏は自分がおかしくなっていることを自覚できなかったという。
そして、山口氏は2018年に不祥事を起こした――。
「その後は損害賠償などで一文無しになり、ツテで建築現場でバイトをして稼いでいたといいます。自分に皮肉を込めたような言い方で、“『鉄腕DASH』に感謝”と、山口さんは苦笑していました」
その後、山口氏は2年弱断酒していたが、2020年に飲酒運転事故を起こしてしまう(本人いわく「底つき体験」だという)。
ここでも「ブラックアウト」して30分もバイク走っていたこと、1.5リットルも酒を飲んでいたのに「酒酔い運転」ではなく「酒気帯び運転」で済んだ理由が “白線の上をまっすぐ歩くことができたからだけど、その時もブラックアウトしていた”というから、アルコール依存の怖さを感じさせる。「気がついたら塀の中にいた」という。
「山口さんは2018年当時は世間への申し訳なさなどはあったけれど、一歩間違えれば人を死なせていた飲酒運転で初めて本当に“助けて!”と強く感じ、専門病院や自助グループへ行って、自分が“アルコール依存症”だと自覚したといいます。そして、自助グループとの交流を経て、こうなってしまった根本的な理由が“不安”だったことを、山口さんは語りました。
ここでは、ジャニーズ事務所(現『SMILE-UP.』)の名前を“ンジュワニーズ”と変に濁そうとして、“逆にちゃんと言ったほうがよかったですね(笑)”とボケるジョークを交えていました。空気を暗すぎる感じにはしたくはなかったんでしょうね」
世間的には、山口氏は仕事も順調でエネルギッシュに生きているように見えていたが、実際は周囲に優秀なタレントが多かったこともあり、自分のことを認められなくなっていたようだ。