■あっという間に増殖するトコジラミ 部屋をまたいで感染も

 実際にトコジラミに噛まれると、その激しいかゆさは夜も眠れないほど。生活に支障をきたすというから恐ろしい。

「卵から成虫になるまで1か月半ほどというスピードで、メスは毎日5~6個ほど、一生の間に200個~500個もの卵を産む。そのため、文字通りあっという間に増殖します」(前同)

 ペストコントロール協会によれば、1匹のメスが家に入り込み卵を産めば、半年後には計算上10万匹にも増えるという。

「暗い場所や狭い隙間を好み、一度屋内に交尾済みのメスやオス・メスの両方を侵入させてしまったら、布団類や家具の隙間、カーペットの裏など、さまざまな場所で繁殖を繰り返し、卵を産み付けます」(同)

 夜行性で日中は隠れているため、発見は困難を極める。気がついた時にはある程度繁殖した後なのだ。

「卵は乳白色で大きさは1ミリほどと小さく、しかも隙間に産み落とされると、素人が肉眼で見つけるのはまず無理。さらに生まれた幼虫は1、2ミリとこれまた小さく、なかなか気づかない。ただ、幼虫時代から血は吸いますし、吸血すると黒い“血糞”を残す。血糞があるとトコジラミの生息がわかります」(同)

※画像は想和ホールディングス提供

 人や物に付着して移動するため、被害は防ぎようがないのが実情だ。

 日本ペストコントロール協会はHP上で、「病院の1室でトコジラミを発見しすぐに駆除したが、1年後には11部屋、2年7か月後には67部屋に広がった」「各種配管、配線、ダクト、天井裏、ドアの下の隙間、壁の隙間などを利用し、あちこちの部屋に広がった」と、部屋をまたいで広がる事例を報告している。

 害虫駆除をおこなう千葉県にある想和ホールディングスの早川佳宏代表も、広範囲にわたるトコジラミの駆除作業も珍しくないと話す。

「最近では、2LDKが10世帯ある2階建てのアパートで、端から端まで全部屋が汚染というケースがありました。

 2階の真ん中がいちばん酷くて、畳から何から、もう血糞だらけです。そこに住んでいたのは若い夫婦で、旦那さんが建設業。あちこちに出張へ行くような人だったので、どこかでもらってきて、一気にまわっちゃったんでしょうね。うちの前にも2社の業者が駆除をしたものの、被害が止まらないということでした」

 なお、トコジラミの駆除は「数回行なう」のが一般的だ。一度の作業で駆除しきれなかった卵がかえる可能性を考慮し、2回、3回と作業を行なう。作業後に“再発”した場合、無料で再施工する保証期間を設ける業者もある。

(2023年12月10日公開)