■亀梨、宮舘に黄色い声が上がるが……

『週刊新潮』(新潮社)などでドラマ批評をおこなうコラムニストの吉田潮氏も、NHK『大奥』について「素晴らしかった」と絶賛する。

「逆転したからこその嫉妬や憂いといった人間の感情の揺れが繊細に描かれていながら、展開に緩急がついていて飽きない。やっぱり女性陣がかっこいいのがカギで、ヒール役になる人も抜群のキャスティング。シーズン2の仲間由紀恵(44)は、場を恐怖で支配するような存在感を作中で見せて、その凄みには震えましたね。

 また、細かい部分にまでこだわる衣装や美術、演出はやっぱりNHKだからこそできたことかな、とも思います。時代劇って本当にお金も手間もかかるから」(前同)

 翻って、フジ『大奥』への期待度はどうか。

「今じゃないよな、とは思います。NHK『大奥』の余韻が残っている人たちがまだまだいる。

 でもフジテレビは、不景気とともに時代劇から撤退し、連続ドラマについても“定番”と“マンネリ”を延々継続する民放が多いなかで、『鬼平犯科帳』のように時代劇で新しい空気感の作品を作ろうという気骨がある局。

『大奥』もその流れだし、最近でも『silent』や『真夏のシンデレラ』などで、若手の脚本家を積極的に起用している。ドラマに力を入れようという意気込みは感じられます」(同)

 今回の将軍・家治役はKAT-TUNの亀梨。同じSMILE-UP.(旧ジャニーズ事務所)所属タレントとしては、Snow Manの宮舘が共演する。予告映像を公開したドラマ公式インスタグラムには、

《亀梨くんの家治さま 美しく力強く逞しく…品格があり最高すぎ、、、》
《舘様がイケボすぎ》

 などと2人のファンが多数殺到し、アツく期待を膨らませている。

 そのいっぽうで、X(旧ツイッター)上には、

《正直NHKのドラマ10大奥でお腹いっぱい、満足して気が済んじゃってるんだよね…》
《フジの大奥がスタンダードなのはわかってるんだけど、NHKの大奥から入ったからなのか、なんかこれじゃない……ドロドロ求めてない……もっと重厚で繊細な心の機微を……ってなってしまった》

 と、イマイチ食指が動かないという声も。

 前出の吉田氏は「”これはなんか違う”と思ってしまうのは、それぞれの人のなかに理想の『大奥』があるからです」と指摘する。

「個人的には、松下由樹版の『大奥』(04年・フジテレビ)が印象深かったんです。慈愛に満ちた春日局役を松下さんが演じていて素敵だった。ただ“部屋のなかの戦い”である『大奥』は、どのバージョンもたくさんの登場人物がいることが特徴の一つでもある。

 そのなかで、誰に注目するかは人それぞれ。注目する人次第で物語の見方も変わります。フジが新しい風を吹かせてくれると信じたいけど、NHKが放送した直後ですし、最初から期待満タンでいるよりは、期待しないぐらいが丁度いいのかも」(前同)

 なお、フジテレビは新『大奥』放送に先がけ、1月9日から『大奥』連続ドラマシリーズ(※)をハッピーアワー枠(毎週月~金/第1部13:50~14:48、第2部14:48~15:45/関東ローカル)にて一挙放送予定だ。

※菅野美穂主演『大奥』(03年)、松下由樹主演『大奥~第一章~』(04年)、内山理名主演『大奥~華の乱~』(05年)

 名だたる俳優たちが通ってきた『大奥』だが、人気のコンテンツだからこそ、“他の『大奥』”と比較されてしまうのはもはや宿命。令和の時代に、フジテレビは新機軸を打ち立てられるか。

吉田潮
コラムニスト。週刊新潮、東京新聞、NHKドキュメント72時間(読む&聴く)、プレジデントオンライン、小学館kufura、ステラnetなどで連載・寄稿。著書に「ふがいないきょうだいに困ってる」(光文社)など。