■SNS時代、日常生活に入り込む「考察・謎解き」

『人の財布』に代表されるような“没入型・謎解き”系コンテンツの魅力――前出の原田氏は、その魅力を「自分が主役、あるいは物語の登場人物として主体的に関われること」だと解説する。

「会話や推理を中心に参加者の中からオオカミ人間を見つけ出す人狼ゲームや、1つの会場に集まった参加者が、さまざまなヒントをもとに協力して、会場からの脱出を目指すリアル脱出ゲームのような、考察・謎解き系のゲームは根強い人気です」(原田氏)

 このブームの波は衰えるところを知らず、今年2月にはリアルな物語体験ができるテーマパーク『東京ミステリーサーカス』(東京・新宿)がリニューアルオープン。推理小説の登場人物の1人になって、参加者たちとのディスカッションを通して犯人を探し当てるゲーム『マーダーミステリー』の人気が広まったりするなど、あらためて注目されている。

「人気の秘密は、ゲームや物語という“非リアル”でありながら、リアルに自分が主役、あるいは物語の中に出てくる1人として、あくまでも自分目線で楽しめることです」(前同)

 一方で原田氏は、「SNS時代になって、考察・謎解きは人々の生活の一部になっている」と指摘する。どういうことか。

「SNS上のコミュニケーションを前提にエンタメ作品が作られるようになり、受け手もSNSでの口コミや反応なしにはエンタメ作品を楽しめなくなっています。常にSNS上でみんながどう思っているのかをチェックするのが、生活者にとっても欠かせない習慣となっている。

 またSNS上の投稿で、作品の感想にとどまらず、分析や考察を投稿する人が増えているのは、SNS上で他者とのコミュニケーションにつながるためですよね」(同)

 SNSがない頃は、一般人の分析や考察は自分だけかネット上の限られた空間で楽しんだり、リアルに友人と会って話し合うものだった。それがSNSの登場によって、圧倒的に手軽に誰かに披露できるうえ、あわよくば反応してもらえるようになったのだ。

「単なる感想をSNS上へと投稿しても、あまり注目してもらえない。しかしながら、分析や考察は、誰かの目に留まる可能性が格段に上がる。エンタメ、SNS、分析・考察は、もはやセットになってきています。裏を返せば、SNSは“(ネット上で)誰かとつながれる”ツールであるからこそ、リアルな世界において“一人でコンテンツを楽しめるようになってきた”とも言えます」(同)