■「書いているうちにどんどん自分を赦せるように」

 自分の中で、それまでは本当に日本中の人を敵に回したぐらいに考えていた。でも、色んな人に支えてもらって、応援してもらって、依存症から回復しようとしている仲間たちと一緒になって今日という日を大事に積み重ねていたら、だんだんと"理解ある人もこんなにたくさんいるんだ”と気づいた。本気でステップを踏んで、しっかりと生き直そうと思いました。

 そして、2019年に高知で講演をやらせてもらうことができた。その時、本当に温かく迎えて貰ってほっとしました。それから毎年帰省しています。

 理解ある人がいる、と知った中で今回は小説という形でお話をいただいて、本当に今思うと、正直にさらけ出すことができました。そしたらどんどん書いているうちに、自分を赦せるようになってきた。

 僕はたくさん間違ってきたし、たくさん傷つけてきたし、僕もたくさん傷ついた。でも改めて、今っていうのは、自分1人が生きてきたわけじゃないし、頑張ってきたわけじゃない。たくさんの理解ある人が僕をもう1回違う角度で見てくれて、その集大成が小説『土竜』です。

 

■高知東生(たかち・のぼる)
1964年12月生、高知県高知市生。1993年に芸能活動を開始、俳優として活躍。2016年6月に覚せい剤と大麻所持容疑で逮捕される。2020年9月に自叙伝『生き直す 私は一人ではない』(青志社)、2023年1月に自伝的小説『土竜』(光文社)を出版。現在、薬物依存症からの回復の啓発活動など、多岐にわたる活動をしている。