■『サイゼリヤ』と競合しない高単価路線のイタリアンチェーンはアリ?

 業績が好調であるからこそ、新たな収益の柱となる可能性を求めて新業態に投資しているのだ。

 では、経営コンサルタントの岩崎氏の目に、それぞれの新業態はどのように映っているのか。どの店もまだ実際に利用はしておらず、「あくまで発表されている情報からの感想」という前提のうえで岩崎氏に話してもらった。

「松屋はもともと、牛めしの『松屋』だけじゃなくて、とんかつ、カレー、ラーメンと飲食のさまざまな業態に手を広げていて、どこかがダメになっても別のどこかでカバーするという方向に以前から舵を取っているんです。生パスタ専門店の『麦のトリコ』もそのひとつなわけですが、これはいいと思います。『麦のトリコ』はパスタの各メニューごとに松竹梅のように3段階の価格設定を用意しているのがおもしろい。

 イタリアンって『サイゼリヤ』のひとり勝ち状態なんですが、『麦のトリコ』のパスタは最低で税込み968円で、『サイゼリヤ』とは最初から価格で勝負していない。すかいらーくの『イタリアン リゾート ペルティカ』も高単価の路線。“ちょっとお高めでそのぶん満足度も高いイタリアンチェーン”の業態は、今後さらに他の企業の参入は増えそうですけど、可能性がある市場じゃないかと思います」

 松屋だと、石焼専門店の『トゥックン²』も高評価だ。

「高級居酒屋の『KICHIRI』を運営するきちりホールディングスが18年から『VEGEGO(ベジゴー)』というビビンバ専門店を始めているんですが、これが業績も好調で、15店舗にまで増えているんですよ。吉野家ホールディングスも牛カルビ丼・スンドゥブ専門店『かるびのとりこ』を23年から始めてどんどん店舗数を増やしていますが、やはり韓国カルチャーブームはまだまだ強い。韓国コスメも大人気ですしね」(前同)

 モスのドリンクスタンド『Stand by Mos』は、飲食業界の未来を見据えた戦略的な出店だと評価する。

「『モスバーガー』で余った野菜を使うといったフードロス的な部分が注目されがちですが、好立地に狭小の物件で、スタッフがひとりで回させそうな、なんならいずれはセルフサービスでも回せそうな業態というのは、今、飲食の方々ならみなさん考えていることだと思います。人手不足による倒産が急増しているくらい、とにかく働き手の確保は深刻な問題ですから。都心の利用数の多い駅の改札の中という、いままでの業態ではなかなか取れなかった“一等地”で、コストのあまりかからない新業態をチャレンジできるというのは強いですね」(同)