■独自路線のコメダ珈琲店とびっくりドンキー
一方、安さは二の次でとにかくおいしいものが食べたい、こだわりの食を楽しみたいという人もいるだろう。そんな方にはびっくりドンキーをおすすめしたい。
「ハンバーグが薄くて平べったい理由は、“お箸で切りやすい様にするため”。ご飯や味噌汁にも凝っており、日本人の味覚に寄り添った商品提供をしています。サラダなどのサイドメニューも自社農園で作ったオーガニック食材を使用するなど、食へのこだわりが詰まっています」
安心・安全な食材を使った高品質な食事をコストパフォーマンス良く味わえるびっくりドンキーだが、特筆すべきは“コーヒー”だと谷頭氏は強調する。
「生産者と直接契約し、自社で焙煎したコーヒーは味の質がとても良い。カフェで飲めば500円以上するようなクオリティのコーヒーが310円~360円(店舗により価格は異なります)で飲めてしまいます。ランチセットに是非追加して欲しいですね」
ここまで紹介した4店舗は、価格と料理のクオリティを比較しコストパフォーマンスの良さをもとに紹介してきたが、消費者がファミレスに求めるのはそれだけとは限らない。休憩できる場所としてのニーズもあるだろう。
ゆったりとした時間を店内で過ごしたいという人に向けて谷頭氏がおすすめするのは、コメダ珈琲店だ。
「コメダ珈琲店といえば大盛りでおいしいメニューが売りですが、長時間滞在できることももう一つの魅力。店舗自体も、ある程度回転率が悪いことを見越して運営されており、カフェの様にランチ帯など時間を限った運営方針は取っていません。朝から晩まで営業するなど、利用者の“時間と空間”を第一に考えたお店なんです」
ちなみに、谷垣氏のおすすめは『「つぶつぶなめらか」めんたいクリームパスタ』(1020円~1110円・店舗により値段が異なります)。辛さとパスタのモチモチ具合が絶妙で、店内にあるソファの座り心地もあいまって極上の空間ができあがるのだという。
独自の戦略を設定して活路を見出そうとするファミレス各社。今後はコメダ珈琲店のような「時間と空間の提供」に踏み切るのではないかと予想する。
「コロナ明けを機に、ファミレスは低価格で他人と会話を楽しめる憩いの場になりました。今までの回転率UPを第一とした経営方針から、今後は来店者に電源提供をしたり、ゆっくりとした時間を過ごしてもらう場所を提供するビジネスモデルに舵を切るのではないでしょうか」
目的に応じてファミレスを使い分けてみるのもありかも。
谷頭和希(たにがしら・かずき)
都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。チェーンストアやテーマパーク、都市再開発などの「現在の都市」をテーマとした記事・取材等を精力的に行う。「いま」からのアプローチだけでなく、「むかし」も踏まえた都市の考察・批評に定評がある。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』他。現在、東洋経済オンラインや現代ビジネスなど、さまざまなメディア・雑誌にて記事・取材を手掛ける。