■多忙な舞台女優としての日々……その悩みとは

 祖母からの教えもあり、天気に興味を持った半井さんはその後、気象予報士の資格をとり、気象会社に入社。そこでは主にラジオの気象キャスターをしていた。

「半年ほど経った頃、会社の方から“NHKのキャスターのオーディションがあるよ”と、勧められたんです。当時は女性キャスターが珍しい時代でした。今でも、なぜオーディションで自分が選ばれたのかはわからないですが、祖母は喜んでくれていましたね」

優しい笑顔を浮かべる半井さん  撮影/小島愛子

 その後、2002年からお天気キャスターを務めた半井さん。「7時28分の恋人」と呼ばれ、お茶の間の人気者となった。

「実はあのキャッチフレーズ、密着取材をしてくださった女性記者の方が名付け親なんです。今は役者をやっているので自分を売り出さなきゃいけないけど、当時は“主役はあなたじゃない、情報だ”と言われていたので。あの頃は、自分を見て! という思いはなかったので、正直、あの時は照れくさい感じでした(笑)」

 キャスターを卒業後の2014年には、清楚なイメージから一転して大人の色気溢れる写真集を発売。周りの反響はどうだったのか。

「当時、バラエティー番組にも出ていたので、周りからはそんなにビックリはされなかったです。写真集のオファーをいただいたときは、私でいいのかなという気持ちもありました。

 本屋さんでの発売イベントで、“今後、何をやっていきたい?”と聞かれ、おこがましいですが“森光子さんのような女優”と答えたら、それが次の日のニュースに出てしまいました。

 実はキャスター時代、番組収録にいらしていた森さんが“半井さんに会いたい”と言ってくださっているとスタッフの方から聞き、急いでお花屋さんに飛び込んで花束を買って楽屋にうかがったんです。森さんは“あなたの天気予報、いつも見てるのよ”と、言ってくださって、ツーショットも撮っていただいて……。その写真は今でも宝物です」

 その後、2015年頃から女優に転身した半井さんはこれまで数々の舞台に出演。

「2024年は、春以降、毎月1本のペースで舞台に出演しています。直近ですと6月から7月にかけては『帰って来た蛍 ~永遠の言ノ葉~』(劇場:俳優座劇場)に、大鶴義丹さんや伊藤つかささんと共演させていただきました。

 千秋楽を終え、そこからすぐに次の舞台『インフェクターゼータ』(劇場:中目黒トライ)の稽古に合流し、その後、9月に『女医レイカ2』、10月は『12』(劇場:中板橋新生館スタジオ)と、連続で出演させていただき、特に、『帰って来た蛍〜』は戦争もので60代の女性の役を演じたのですが、その後のコメディの舞台では実年齢よりも若く可愛らしい役だったので、役の切り替えが大変でしたね」

 毎月別の役を演じることで、役の切り替え以外でも大変なことがあったという。

「舞台をしているとなかなかお休みがないので、この12月はやっとお休みが取れてようやく自分に戻れている時期なんです。

 器用な方は、舞台中でも仕事とプライベート、オンオフの切り替えができるみたいですが、私は舞台のときは家でもずっとセリフや役のことを考えているので、自分に戻れなくて……。最近はマシになりましたが、昨年6月、『祖国への挽歌』(劇場:俳優座劇場)という舞台で悪役をしていたんです。2019年に同作品で初演した時はその役柄を引きずっていたのか、当時は“だいぶ性格がキツくなったね”と、知り合いから言われてしまいましたね」