■『松屋』躍進の理由
業界勢力図を一新させた『松屋』の躍進。背景にはどのような理由があるのか。小売業界に詳しい経営コンサルタントの岩崎剛幸氏が解説する。
「最大の要因は『松屋』の定食店化です。定食メニューを充実させたことで1000円超のメニューを増やした。こうすること客単価を上げられますし、客数も伸ばしやすいんです」
現に昨年11月には『カルビの炙り十勝牛丼』(930円・税込・価格は編集部調べ・以下同)、今年1月には『チーズオムデミハンバーグ定食』(1380円)を投入、高額メニューを増やしているのは明らかだ。
「この施策があたったのか25年4~12月の松屋フーズホールディングスの客単価は10%増となっています。また、定食メニューを強化したことでヘルシー志向の女性客も取り込めた。来店するお客さんからすると“ちょっと良い牛丼店”というイメージなのでしょう」(前同)
また、店舗で進むオペレーション改革も『松屋』の躍進につながっていると、岩崎氏は指摘する。
「タッチパネルの導入やオペレーション改革を進め、少人数でも回る店舗づくりを徹底しています。こうすることで人件費を抑えながら、売上と利益を同時に伸ばせる構造を作れるのです」
このまま牛丼業界では松屋の一強体制が続くのか――。岩崎氏が牛丼業界の今後を占う。
「物価高やエネルギー高が続き原材料費の調達コストが上がるこの状況下では、『はま寿司』や『なか卯』、『ゼッテリア』(旧『ロッテリア』)など様々な業態を展開するゼンショーホールディングスの組織力は有利に働くでしょう」
事実、ゼンショーホールディングスの25年4~12月期の連結決算を見てみると、売上高は11%増の9366億円、営業利益は5%増の609億円となっている。主力である牛丼事業が不振の一方で、グループ全体の売上や利益は上昇しているのだ。
「『松屋』としては『すき家』が減速している今こそが巻き返しの最大のチャンスと見ているはず。地域の年齢構成などを加味した立地別売上高予想システムを自社で開発していますし、今後も更なる新店の開店と多数の既存店改装によって売上を伸ばし攻勢をかけるはずです」(前同)
王者『すき家』の転落で牛丼業界の勢力図は塗り替わるのか――。
流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。「情がトップコンサルタントへの近道」と語る。著書多数。