■平成ライダー出身の高杉も通った道

 ここまで令和ライダーに限って説明してきたが、平成仮面ライダーの場合は売れっ子の高杉真宙(27)も、平成ライダー15作目の『仮面ライダー鎧武』にて、悪堕ちから更生した仮面ライダーを年間通して演じていた。

 高杉が演じたのは、“呉島光実(くれしま・みつざね)/仮面ライダー龍玄”。当初は若干腹黒い程度で、主人公の所属するダンスチームに所属するよき後輩だった。

 しかし、自分の思い通りに動いてくれない主人公・”葛葉紘汰(かずらば・こうた)/仮面ライダー鎧武”(演:佐野岳)に苛立ちを募らせたり、片思いしていたヒロイン・舞(演:志田友美)にも思想を理解してもらえなかったことなどから、次第に関係が悪化。「仲間っていうのは、僕の思い通りになる人物のこと」「希望っていうのはタチの悪い病気」などと暴言を吐くまでに成り下がってしまう。

 最終的にはすべてを失ってしまったが、主人公の励ましもあり、ヒーローとして再起。「今の自分が許せないなら新しい自分に”変身”すればいい」​「人生は何度も間違えるけど、そのたびにやり直して少しずつ進む」という、メイン視聴層である子ども達に向けてのメッセージ性を強く感じさせるキャラクターへと成長した。本編後の世界を描いた劇場版や小説版では、同じく”変身”できた兄・”呉島貴虎(たかとら)/仮面ライダー斬月”と2人で、事実上の主人公として活躍している。

 こうした“悪堕ちを経ての更生”という役をやらせるには、善人時代とのギャップを強く出したり、逆に善人時代からどこか危うさを覗かせたりと、高度な演技が求められる。それだけの演技力を持ち合わせている俳優が売れるのは、必然かもしれない。『ギーツ』で桜井景和を演じる佐藤瑠雅も、その例に続けるか――。