■読売新聞大阪社会部OBが指摘する「強圧的」な態度

 読売新聞が起こしてしまった、記事ねつ造という一大事。読売新聞大阪社会部OBで、在職時には大阪府警担当記者として、事件取材を中心に数多のスクープ記事を手がけたジャーナリストの大谷昭宏氏は「記者教育以前の問題」と、古巣の失態を斬り捨てる。

「今回の話は、誤報ではなく”ねつ造”。自分で勝手に筋書きをつくって犯人を仕立て上げる刑事と同じですよ。現場の記者が、記事のチェックを担当する担当者にとって都合のいい情報が取れていないとして、担当者が記事を自分の思う筋書きに変えてしまった。

 冤罪事件を叩いている新聞側にも冤罪を発生させる警察と同じような構造があり、それが”ねつ造”記事につながっているということ。そういう記者が残念ながらゾンビのように再生産されている。根本的に報道とは何かがわかっていない。記者教育以前の話です」(大谷氏)

 しかし、記者の取材とは取材相手がいて初めて成立するもの。取材相手が口にしていないことを書けば、抗議が来るのは明らかなのでは? という素朴な疑問が浮かぶものだが、その点を大谷氏はどのように捉えているのか。

「取材を受けた企業の社長側から読売へ、おそらく抗議があったのでしょう。ただ、読売は、4月8日に掲載した”おわび記事”の時点ではでっちあげは認めず、”確認が不十分だった”との内容に留めています。つまり、取材不足だったという理屈で逃げようとしたわけですね。取材相手を強圧的にねじふせられると思ったのではないでしょうか」(前同)

 しかし、その後、4月17日になって読売新聞は改めて謝罪することに。この背景を前出の読売関係者が補足する。

「相手だって小林製薬という大きな取引先との付き合いがあります。言ってもいないことを書かれたうえ、4月8日の”おわび記事”でも、ねつ造だった事実は伏せられたまま。これでは取材を受けた社長にとって今後の仕事や会社運営に影響が出かねない大変な死活問題です。

 そこで大阪本社に訴え出たのですが、お詫び記事の掲載で済まされてしまった。これはマズいとなり、東京本社へと相談したというわけです。現に、東京本社の法務部が大阪へと足を運び、聞き取り調査を行なったと聞こえてきます。その結果、慌てて記事のねつ造を紙面で認めたと見られます」