■「新聞離れ」の今だからこそ大事なこと

 読売新聞OBでもある前出の大谷氏から見ても不信感のある、今回の読売新聞による行ない。「新聞離れ」の加速度が世間では増す中で、読売新聞はそれでも大手5紙ナンバーワンの販売部数を誇る。

 一般社団法人日本ABC協会が発表したデータによれば、2024年1月度で朝日新聞が約349万部、毎日新聞が約158万部、産経新聞が約88万部。読売新聞は約607万部と、朝日・毎日・産経の三大一般紙を合わせた数よりも多い、発行部数を誇っているのだ。

 大谷氏は、「新聞離れの今だからこそ、”記者教育”と口先で言っているだけではダメ」だと話す。

「新聞離れと言われても、どのメディアを信頼するかという総務省の調査では、ありがたいことに新聞がトップなんです。さらに新聞の販売部数が減る中でも読売は1位を守っている。そうした中でこんな事件があれば、わずかに保ってきた読者からの信頼を失ってしまいます。

 社内ではコンプランスや社内倫理がどうだとか言っていても、結局、強権的な姿勢が今回、まさに跳ね返っていると思います。記者としての一番大事な部分をみんなで話し合って共有、検証しなきゃいけない」(前同)

 記事冒頭に挙げた「読売行動指針」には《謙虚な心を持とう。他者への敬意は視野を広げる》《誠実に向き合おう。一つ一つの積み重ねが信頼を築く》という文言も並んでいる。果たして処分組は、この言葉を知っていたのだろうか。

大谷昭宏
東京都生まれ。早稲田大卒業後、読売新聞大阪本社に入社。記者時代は大阪府警捜査1課などを担当。事件記者として上司である故黒田清氏とともに「黒田軍団」の一員としてグリコ・森永事件など数々のスクープをものにした。1980年から朝刊社会面コラム欄「窓」を7年間担当。87年退社後は大阪に事務所を設けてジャーナリズム活動を展開している。