■浮き彫りになった悪質性「落ちるところまで落ちたな、という感じですね」

 最終的には記事内で”ねつ造”行為が行なわれていたことが認められた、読売新聞の報道。前出の大谷氏は、今回浮き彫りになった大阪社会部の悪質性を指摘する。

「まず、岡山支局と大阪社会部のどちらが偉いということもない。ところが取材を担当した岡山支局の記者が”社会部が求めるトーンに合わせたいと思った”と語っていることからもわかるように、”大阪社会部がこう言ってるんだから、その他は従え”という姿勢が社内にあるのは明らかです。大阪社会部主任の”イメージしたものと違った”という発言も“大阪社会部が地方支局に対して強くありたい”という意思のあらわれでしかない。違和感があります」(大谷氏)

 また、「新聞社の組織構造を無視した指示系統で記事の確認が進められたのでは」と、大谷氏は話す。

「組織として、本来新聞社には記事が世に出るまでに3つも4つもチェック機関があるはずなんです。今回、原稿をねつ造した大阪社会部主任はサブデスクというポジション。通常、取材記事の企画を立てたら、支局長を通して、その支局のデスクが記者に指示をする。

 記者から原稿が上がってきたら、支局のデスクが確認し、社会部へと原稿を送るのが本来の筋です。それらの過程を全部すっ飛ばして、支局の記者へと大阪社会部のサブデスクが直接指示をしていること自体が、仕事の流れを間違えている。最初から記事をでっちあげるつもりだったのでは? と疑って見てしまいます」(前同)

 読売新聞大阪社会部といえば、1984年には大阪府警賭博ゲーム機汚職事件を追ったルポ「警官汚職」で日本ノンフィクション賞を受賞するなど、日本ジャーナリズムの一翼を担う集団だった。まさに、その頃、読売新聞大阪社会部の記者として現役だった大谷氏の目に、今の大阪社会部はどう映るのか。

「落ちるところまで落ちたな、という感じですね。3年前(21年)には大阪府と読売新聞が、府の情報発信などを協力する包括連携協定を結びましたが、行政と新聞社が手を結んでどうするんだと。本来は権力をチェックするのが新聞社の立場であるはずなのに、変遷してしまっているなと驚きました。

 新聞社は自分たちが偉いんじゃなくて、偉そうな部分をしっかりチェックするのが仕事。光の当たらない人、声を出そうとしても出せない人たちに代わって権力を見張らなくてはならないのに、権力の一端にでもいる気分で、強圧的、強権的になるのは許されることではありません」(同)