■『セクシー田中さん』は構成が秀逸

 放送前、連続ドラマ『セクシー田中さん』は木南のセクシーなベリーダンサーの衣装や、ロングヘアがトレードマークの“めるる”こと生見がショートヘア(ウィッグ)になったことが注目された程度。それが、秋ドラマのダークホースとなり、ついに主役にまで成り上がったのだ。

「『下剋上球児』は公式が推していた“サスペンス要素”などシナリオ構成が不評でしたが、『田中さん』は逆。脚本の評価がとても高いですよね。“ベリーダンス”というしっかりした軸があって、そのうえで徐々にヒロイン、男性陣、恋愛と話を広げていく構成が実に秀逸でした。『下剋上球児』にちなんで野球でたとえると、“話題性→共感→深み→恋愛”が、投手継投のように繰り出されていった感じですね。

 まず、セクシーなベリーダンス衣装の強烈なビジュアルで話題性をつくり、とりあえず1話を見てみる。すると、アラフォー、アラサー女性は田中さん(木南)、20代女性は朱里(生見)に強く共感を抱かずにはいられなくなるんですよ」(テレビ誌編集者)

 田中さんはいわゆる“強い女性”ではない。ベリーダンスに出会う前、常に猫背の人生を過ごしてきた。まだ35歳だったのに「ある日、鏡を見たら老婆(※老け込んだ自分)が映っていた」ことで「胸を張って生きよう」と決めたが、会社では人とコミュニケーションできなかったり、四十肩になってしまったり。

※画像は『セクシー田中さんの公式X(ツイッター)『@ntv_tanakasan』より

 一方、朱里は若くて可愛いが、逆にそれ以外に自分の価値を見出せない。「普通の幸せ」が欲しくて友人と合コンで頑張ったら、陰で笙野(毎熊)に「あいつら絶対遊んでる」と言われてしまう――第1話の時点で思わず共感してしまう、女性の生きづらさをしっかり描いていた。

「さらに話が進むと、今度は男性陣です。最初こそ“昭和の男”の悪い部分を体現したような男だった笙野が、田中さんとの交流を経て、変わっていく。

 そこでは、最初に笙野が若い女の子に遊ばれて女性不信になった、という同情すべき背景を描いただけでなく、朱里がそれを“私や田中さんに1ミリも関係なくない?”としっかり切り捨てているのが地味ながら大きい。“嫌われキャラ”は改心する前に中途半端にフォローされると、見てる側もシラけてしまうところがありますよね」(前同)